BT54/10w4d:治験の病院
今回から産科外来へ。
今後は退院時に診察していただいた女性医師に診てもらうことになっていました。
緊張しながら内診台に座ると、
「太もものあざが痛々しいですね~!痒くないですか?」
と驚かれました。
ヘパリン注射の影響です。
打つ場所によっては、殴られたような青あざになります。
先生が代わって慣れないせいか、内診の痛みを感じながら、モニターを確認。
今回も無事、元気な心音が聞けました!
心拍 :191bpm
胎児 : 37.9mm
週数的にちょうどいいとのこと。
まずはひと安心。
またしても胎嚢が長細く、赤ちゃんが窮屈そう。
先生に大丈夫か聞いてみると、エコーの角度を変えて、胎嚢に充分なスペースがあると教えてくれました。
「こういうケース、けっこう多いんですよね。赤ちゃんは隅っこが好きみたい!」
形よりも余白があることがポイントなんですね。
今のところ赤ちゃんに浮腫みは見られず、子宮内に目立った出血も無いとのこと。
ようやく安定してきました。
先生は明るくハキハキした方で、話していると自分までポジティブになれます。
私はこれまでの流産の経験から、内診台に座ると必ず「駄目でした」と言われて頭が真っ白になる場面がフラッシュバックしていたのですが、先生のおかげで今ではそのトラウマも消え去りました。
診察室に戻ると、先生から
「ここまできたのでもう母子手帳をもらってもいいと思いますが、どうしますか?不安ならまだ先でもいいですよ?」
と言われました。
「2日後に恵愛医院を受診予定なので、そこで大丈夫だったらもらいに行きます。」
と返答。
その後、別の部屋で看護師さんから母子手帳や出産までのスケジュール、母親学級などの説明を聞きました。
いただいた『妊婦健診・出産のご案内』の冊子は簡易な物でしたが、私にとっては何よりのご褒美でした。
BT56/10w6d:恵愛医院
2日後の土曜日。
いつもの院長先生だったのに、この日も内診で痛みを感じました。
子宮が大きくなってきたせい…?
そして、モニターを見た瞬間、赤ちゃんが驚くほどグルグルと動く様子がわかりました。
思わず、「動いてる!」と口に出す私。
「元気に動いていますね。こんなに小さいのに結構動くんですよね!かわいいですねー!」
いつも落ち着いている先生が、こんな風に嬉しそうに話すところを始めて聞き、これまでに味わったことのない幸せな気持ちが込み上げました。
先生は、ここが手で、ここが足で…とモニターを指しながら、いつもより時間をかけて説明してくれました。
まさか指まで見えるとは思わず、成長具合に感動。
大きさも44.3mmと順調だそうです。
内診室にいる時間が長かったため、夫が待合室で不安そうな表情を浮かべていました。
これまで何度も私の口から「駄目だった…」というセリフを聞いてきた夫。
不安にさせてごめんね。
周りの人に気づかれないよう、膝の横でピースサインを作りました。
診察室では、卒業後も継続してバイアスピリンとヘパリンの注射を処方してもらえるか確認。(出産予定の都内の病院では自費になるらしい)
処方箋の受け取りは代理でもいいそうなので、一ヶ月に一回、夫が通院してくれることに。
問題なければ次回で卒業と言われ、それまでに紹介状を準備していただけることになりました。
ようやく恵愛医院で、念願だった『9週の壁』を越えることができました。
ただ、これまで都内の病院と並行して受診していたので、次回の診察まで一週間も空くのは久しぶり。
気を緩めないように過ごそうと思いました。
10週を過ぎたあたりには、ずっと続いていた出血も治まりました。
それと同時にさらに悪阻が悪化。
料理ができずに宅配弁当に頼ることに。
栄養が摂れるし、夫のご飯も気にしなくていいので、一石二鳥でした。
BT63/11w6d:恵愛医院
一週間後の土曜日。
“大丈夫、だいじょうぶ、ダイジョーブ!”と呪文を唱えるように呟きながら内診室へ。
エコーが入り、前回よりも強い痛みを感じながら、恐る恐るモニターを確認。
赤ちゃんは無事でした!
58.2mmと順調に成長し、この日も手足を動かしていました。
最初は米粒みたいだった胎芽は、もうしっかりと人間の形になっていて、目や鼻の位置までわかりました。
もう1つの胎嚢はまだ残っているようでしたが、心配ないとのこと。
赤ちゃんに浮腫みなどの異常も見られない様子。
「安定期はまだ先ですが、ここまで来たら流産の確率はぐっと減りますからね。」
「出産まで大変と思いますが、頑張ってください。」
そう言われ、涙を堪えながら二人で先生にありったけの想いを込めて感謝の言葉を伝えました。
先生には感謝してもしきれません。
これだけたくさんの患者さんがいるなら、診察が多少流れ作業になってもおかしくないはず。
でも、先生は一切そんな素振りを見せませんでした。
『それぞれの夫婦に正面から向き合い、喜びや痛みを受け止める。』
『一組一組の夫婦の成功を心から望み、全力で治療する。』
先生のそういった姿勢が、流産を繰り返す私たちの背中を押し続けてくれたのです。
最後に処置室で、
『妊娠おめでとうございます』
と書いた用紙を受け取りました。
対応してくれたのは、なかなか成功しない私をいつも気にかけ、流産の手術の時にも側で励ましてくれたベテラン看護師さん。
顔を見た瞬間に、我慢していた涙が溢れ、思わず抱きついてしまいました。
気づくと看護師さんももらい泣き。
「よく頑張ったねー!あぁ、母親のような気持ちだわ!」
と言って喜んでくれました。
医院を去る時、約4年半に渡る不妊治療からようやく卒業するのだと実感しました。
ゴールはまだまだ先ですが…。
ふたりで選んで進んできた道。
ふたりで落ち込み、乗り越えてきた日々。
結婚してすぐに妊娠していたら全く別のものになっていたはずの4年半は、私たち夫婦にとってかけがえのない宝物となりました。
この4年半で夫婦の絆はより強くなり、きっとこれからの人生の励みにもなるだろうと信じています。