*ひだまり妊活日記*

*ひだまり妊活日記*

不妊症&不育症治療と8度の流産を乗り越えた七転八起な日々の記録

不育症の治験参加まで ③

く 

 

前回の記事の続きです。

 

 

先生の診察の後、CRCさんから治験についての説明を聞きました。


専用の冊子をいただき、その内容に沿って説明が進められました。

 

 

私が受けようとしている不育症の治験は

『 人免疫グロブリンGB-0998を用いた第Ⅲ相臨床試験

 

免疫グロブリンは、既に世の中で医薬品として他の病気に使用されています。

今回の治験で不育症に対しての有効性や安全性が認められ、国の審査で承認されると、不育症にも薬として使用できるようになるのです。

 

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福岡大学病院 臨床研究支援センターHPより

 


今回は、その治験の概要について書いてみたいと思います。

 

 

 治験の方法

 

この治験では二重盲検比較法という方法が用いられています。

以前記事にも書きましたが、GB-0998と生理食塩液(薬として作用が無いもの)のどちらか一方を点滴する、という方法です。

GB-0998にあたる確率は50%であり、患者さんはもちろん、医師やCRC、製薬会社のスタッフすら試験が全て終了するまでどちらが投与されたかわからないようになっています。

プラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐためにこの方法が使われます。


これだけ聞くと、“大変な思いをして治験を受けるのに、生理食塩液に当たったら残念すぎる”と思われるかもしれません。

確かにその通りです。

しかし、この治験に参加しても流産になってしまった場合、希望すると次の妊娠では一般臨床試験に参加することができ、全員にGB-0998を投与してもらえるそうです。(まだ治験が行われている場合に限る)

二重盲検で投与されたのがGB-0998か生理食塩液だったかは問われません。

この条件があったからこそ、私は治験参加に踏み切ることができたのです。

 

 

 治験の流れ

 

無事着床し胎嚢が確認できたら、5w6dまでに受診して治験に登録します。

そして6w6dまでに入院し、治験薬の点滴の投与を開始します。

治験薬は5日連続で投与されます。

治験薬の投与量は体重によって決められるため、登録直前に体重を量ります。

治験薬投与開始1週間後に採尿や採血、超音波検査を行うため、8日間入院することになります。

退院後は妊娠8週、12週、16週…と定期的に受診し、採尿や採血、超音波検査をスケジュールに沿って行います。

治験のための通院は4週毎ですが、妊娠の状態によっては2週毎に受診を指示されるケースも多いようです。

 


 副作用について

 

冊子には、GB-0998の重大な副作用とその他の副作用が分かれて記載されていましたが、頻度の高い副作用は肝機能異常ぐらいでした。

一番気になっていた胎児への影響ですが、これまで人免疫グロブリンを投与して産まれた赤ちゃんの先天異常は、投与していない通常の妊娠の場合と比べて頻度に差がないようです。

 

 

 治験の中止について

 

被験者が中止を希望すれば、同意した後でもいつでも止めることができます。

また、健康上の問題が生じた場合などに、医師から中止の指示が出ることがあります。

 

 

 費用について

 

治験に同意した日から治験薬投与1週間後までに行った全ての検査と入院基本料は製薬会社が負担してくれます。

診察料や食事代は自己負担となります。

退院後の通院では、受診のたびに1万円頂くことができます。

実際は治験の回数よりも受診回数が増えることが多いようですが、治験以外で受診する場合は自己負担となります。


ちなみに、私は他県に住んでいるのですが、1万円あれば夫に車をレンタルしてもらって通院できる♪とか甘い考えをもっていました…。

現状は、切迫早産で毎週通院。

しかも夫が休みをとれない日はタクシーを使うので出費が多く、月1回の1万円は少しの足しにしかなりません。

 

 


私が一番気になっていた赤ちゃんへのリスクですが、免疫グロブリンによる明らかな影響はこの時点で出ていないとわかり、ほっとしました。

とはいえ、もともと不育症に対してはまだ未承認の薬。

データの分母が少ない分、まだ知られていない影響が出ないとも限りません。

だからといって、治験を躊躇する気持ちにはなりませんでした。

このまま今まで通り移植を続けていても、何も変わらない気がしたのです。


夫は私に起こり得る副作用の項目に、ひたすら目を通していました。

免疫グロブリンが既に別の病気に使用されていること、頻度が高い副作用があまりないことから、少し安心したようでした。

 

 

前回の記事にも書いたように、治験の登録は妊娠して胎嚢が見えてからでないと行えません。

そのため、この日は『参加基準事前確認のための同意書』にサインをして帰りました。

実際に登録する日までに、私が基準に適合するかどうかをCRCさんによって詳細にチェックしてもらうためです。


*CRCの仕事と治験への参加基準についてはこちらをご覧ください↓↓↓

 


この同意書にサインしてからすぐに妊娠する人もいれば、しばらく妊娠せずになかなか治験を受けれない人もいるんだろうな。


“ 私は前者になれますように ”


次にここに来る日が近いことを願って、病院を後にしました。

 

 

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不育症の治験参加まで ②

 

 

前回の記事の続きです。

 

不妊治療で通院している恵愛医院の紹介状を持って、夫と一緒に治験を行う都内の病院を受診しました。


まず不育症外来を受診して治験の責任医師の診察を受け、その後CRCさんから治験についての説明を聞きました。

 

 

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不育症の研究や治療で有名なこちらの先生との出逢いは、今でも鮮明に覚えています。


緊張しながら診察室に入ると、これまでの辛い経験全てを受け止めてくれるような寛大なオーラと、安心感のある暖かな笑顔で迎えてくれました。


持参した過去の検査結果と一緒に、エクセルにまとめた過去の治療歴・流産歴のデータもお渡ししました。

問診票と共にこれらにもひと通り目を通していただいた後、内診室へ。


エコーの結果、特に子宮に異常は見られないとのこと。

以前受診した杉ウィメンズクリニックでも異常無しと言われていましたが、今回も同じ診断で安心しました。


再び診察室へ戻り、先生のお話を聞きました。

これまでの検査結果を見たところ、不育症に必要な検査はほぼ済んでいるとのこと。

既に杉ウィメンズクリニックと、現在通院している恵愛医院との2カ所で不育症検査を行っていたので、そう言われるだろうと思っていました。


さらに先生は新しい情報を教えてくれました。

最近流産の原因のひとつとして、子宮内膜炎が注目されているそうです。

子宮鏡を行い、組織を取って調べる検査で診断できるとのこと。

ただ、私の場合は比較的妊娠週数が進んでから流産になるのが多いことから、可能性が低そうと言われました。

あえて検査する必要は無さそうです。


意外だったのが、20歳の時に行った腹膜炎の手術に触れられたことです。

当時の年齢や長い年月が経っていることから、これが原因の可能性も低そうとのこと。

これまで3ヶ所のクリニックで流産を経験しましたが、腹膜炎の手術との関係を言われたのが初めてだったので、そういう可能性もあったのかと逆に驚きました。


そして不育症の治験について。

私はすでに不育症の治療でバイアスピリンとヘパリン注射を行なっていたため、これ以上の治療法は無く、治験に参加するというのは良い選択だと言われました。

着床後したら一度早めに受診するように、とのこと。(着床して胎嚢が確認できてからでないと、治験には登録ができません。)


先生が話終わった後、隣でずっと黙って聞いていた夫が、口を開きました。

「これまでに8回も流産しているんですが…。出産までたどり着ける可能性はあるんでしょうか。」

先生は穏やかな表情を浮かべて答えてくれました。

「何度も流産して辛かったでしょうね。でも同じように流産を繰り返す人はたくさんいます。」

そして、何とも心強い言葉が続きました。

 

「これまで多くの患者さんを診てきましたが、あなたと同じぐらいの年齢で不育症と診断された方で、出産できなかった方は一人もいませんよ。」

 


流産の手術が終わったあと、治験に参加しようと決めてここまで突っ走って来ましたが、正直出産への期待は少しずつ薄れていました。

やれるだけやってみようと思っていたものの、結局同じ結果に終わるのではないか、私が出産できる日は来ないのではないか…。

心のどこかでそう感じていました。


でも、先生の思いがけない言葉を聞いて、心がパーッと明るくなり、涙が出そうになりました。

嬉しくて涙が出そうになるなんて、いつぶりだろう…。


先生にお礼を言って診察室を出たあと、待合室に座り、夫と目を合わせました。

何も言わなくても自分と同じ感情が込み上げていることが伝わってきました。


『 私たち、まだ希望がもてるんだ!!』

 

 

不育症の治験参加まで ①

 

 

通院している恵愛医院で流産と宣告され、不育症の治験について紹介してもらってから、私たち夫婦はすぐに動きました。


まずは治験を行なっている都内の3病院を見学しに行きました。

病院の立地や家からの距離、院内の雰囲気を見ただけですが、今思い返しても意外と大切な行動だったなと思います。


また、Fuiku-Labo(フイクラボ)というサイトを中心にネットで情報を集めました。


そして、ある程度知識を身につけた上で、治験を行なっている病院に問い合わせました。

問い合わせたのは都内の3病院のうち2病院ですが、説明された内容はほぼ同じでした。

治験コーディネーターの方により私が治験の参加基準に当てはまるかを確認され、簡単に治験の流れを説明していただいたのです。

 

今回は治験コーディネーターの仕事と、免疫グロブリンの治験への参加基準についてご紹介したいと思います。

 

 

 治験コーディネーター(CRC)とは


製薬会社が新薬を開発するとき、最終段階で人体への有効性と安全性を確認する「臨床試験(=治験)」の調整役。

治験をスムーズに進行させるため、製薬会社や治験を行う医療機関の医師と共に、患者さんをサポートします。

 

 

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※ 株式会社クリニカルサポートHP より

 

CRCは医療機関の治験事務局に直接雇用されるパターンと民間企業であるSMO(治験施設支援機関)に所属して、医療機関に派遣されるパターンがありますが、仕事内容はほとんど変わりません。

CRCになるために資格は必要ありませんが、看護師や臨床検査技師、薬剤師、栄養士など、多くの人が医療系の資格を持っている傾向にあります。

治験実施計画書(プロトコル)に基づき、被験者の来院日、検査・投薬予定日などスケジュールを管理します。

被験者の来院時には医師の診察に同席し、症状の確認や服薬状況の確認、有害事象のチェックなどをおこないます。

他にも、被験者の不安や心的負担を軽減するための相談相手として、被験者に寄り添ってくれます。

 

 

 

 原因不明の不育症に対する免疫グロブリン臨床試験への参加基準

 


以下の条件を満たす方
  1. 原発性習慣流産の方(一度も赤ちゃんを産んだことのない方)
  2. 自然流産歴が4回以上の方(妊娠検査が陽性だけで終わった場合を除く)
  3. 不育症のリスク因子に関して次のいずれかの方

    (1)リスク因子が不明の方 以下のリスク因子の検査結果について異常が見つからず流産した方

    ①子宮形態異常(弓状子宮はリスク因子としない)

    甲状腺異常

    ③夫婦染色体異常

    ④抗リン脂質抗体陽性

    ⑤第XII因子欠乏

    プロテインS欠乏

    プロテインC欠乏

    (2)リスク因子が判明している方

    検査の結果、以下のリスク因子が見つかり、それに対する治療をしても流産した方

    ①子宮形態異常(中隔子宮):手術を受けていること

    甲状腺異常:内科的治療を受けていること

    ③偶発的抗リン脂質抗体陽性(ただし、直近の検査が陰性)、第XⅡ因子欠乏、プロテインS欠乏、プロテインC欠乏 :アスピリンとヘパリンの併用療法を受けていること

  4. リスク因子の有無に関わらず、流産した赤ちゃんの染色体が正常であった回数が少なくとも1回ある方
  5. 同意取得時に年齢42歳未満の方
  6. 少なくとも治験薬点滴開始1週後の検査・評価まで入院可能な方

 


以下の条件に該当する方は治験を受けれません
  1. 不育症のリスク因子である夫婦染色体異常のある方、抗リン脂質抗体症候群および偶発的抗リン脂質抗体陽性(ただし、直近の検査が陽性)の方
  2. 糖尿病を合併しているか、または耐糖能異常(血糖値を正常化する能力が不充分な状態)を指摘されているにも関わらず、適切に治療を受けていない方
  3. 過去に不育症の治療として免疫グロブリン静注療法を受けた経験のある方
  4. 現在、悪性腫瘍の治療を受けている方
  5. 血栓塞栓症の既往のある方
  6. これまでに人免疫グロブリン製剤を使用して、ショックあるいは過敏症がみられたことのある方、または遺伝性果糖不耐症(生まれつき果糖を正常に代謝できない病気)を合併している方
  7. 過去にIgA欠損症と診断された方、あるいは登録時の検査で血清IgA値が5mg/dl未満であった方
  8. 過去12週間以内に他の治験薬を使用された方、または現在他の治験に参加されている方

 

 

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CRCの方に、治療歴や流産歴を電話でひと通り確認していただいたところ、おそらく私はこの参加基準に適合するだろうということがわかりました。

 

通常の治験では、まず医療機関で医師やCRCから説明を聞き、同意書にサインをした後に参加基準に適合するかどうかの確認が行われ、問題がなければ登録される、という流れで進められます。


しかし、今回私が受ける免疫グロブリン臨床試験は、胎嚢が確認できた後、5w6dまでに登録を行い、6w6dまでに入院して投与を開始をしなければいけないという、慌ただしいスケジュールになっています。

妊娠発覚から治験薬投与までの期間が短いため、参加基準に適合するかの確認が遅れたり、新たに検査する必要があったりすると治験に間に合わなくなる可能性があります。

(そもそも、5w6d過ぎてから胎嚢が確認できるケースもありますよね…)

また、妊娠発覚後に通院回数が増えることは、患者さん側の負担も大きくなります。


そういった点を踏まえて、この治験に限っては『参加基準事前確認のための同意書』を用いて、妊娠前に予め参加基準に適合するかを確認したり、足りない検査を行っておくという仕組みになっていました。

そうすることで、患者さんが妊娠した後スムーズに治験に参加できるように工夫されていたのです。(私が選んだ病院の場合)

 

 

私たちは問い合わせた病院のうち片方を選び、対応していただいたCRCさんと予定を合わせ、受診することにしました。

受診日までに問診票を書いたり、これまでの検査結果を集めたりして漏れが無いよう準備。

また、医師やCRCさんに把握していただきやすいよう、これまでの治療歴や流産歴をエクセルで作成しプリントしておきました。

 


そしてようやく、治験を行う都内の病院へ初受診することになります。

次回に続きます。

 

 

32w4dの診察

 

 

本日は妊婦健診を兼ねた受診日でした。

 

前回の受診から一週間。

その間に、恥骨のすぐ上の辺りにも胎動を感じるようになってきました。

おそらく赤ちゃんの頭です。


胎動を感じれるのは嬉しいけれど、それが刺激になって張りやすくなったり、子宮頸管が短くなるのが不安でした。


昨夜はあまりに胎動が大きく、お腹や脇腹を蹴られてなかなか寝つけず。

夜中も膀胱を刺激され、何度もトイレに起きました。

 


「今日こそ入院になりそうな気がする…」


早朝、出勤前の夫に伝えました。


「そっかぁ。できれば帰ってきてほしいけど、赤ちゃんやfuuの体調を優先して判断してもらってね。」


夫は寂しさと覚悟が入り混じったような表情を浮かべ、私のお腹に手をあててから、仕事に向かいました。

 

 

朝食を食べて身支度を整えたあと、念のため入院の準備を持ってタクシーへ。

家を出る前には、たくさんの方からいただいた御守りや御札、そして妹の遺影に手を合わせることが、いつのまにか習慣になっていました。

 

 

 

今日も病院は混んでいて、診察に呼ばれるまで一時間待ちました。

待つこと自体は慣れっこですが、横になるよう指示が出ている今、ずっと椅子に座っているのがとても苦痛です。


“この時間にも子宮頸管が短くなってるかも…”

ネガティブな想像が脳裏をよぎります。

 

 

ようやく呼ばれて診察室へ。

経腟エコーの結果、子宮頸管の長さは前回と全く変わらず。

「本来なら入院してもらう長さだけれど、急激に短くなっているわけではないので、このまま騙し騙し行きましょう。」

先生の口からは、前回と同じコメント。

また一週間後に通院することで入院を免れました。

嬉しさと同時に、夫の喜ぶ顔が目に浮かびました。

 


今日で32週と4日。

36週まで陣痛や破水が起こらず粘れれば、普通の生活に戻っていいそうです。

あと一ヶ月。

身動きとれないのはつらいけど、なんとか頑張るぞ!

 

ちなみに、赤ちゃんはすくすくと成長中!

週数よりも大きめで、特に頭はかなりの大きさ。

逆に心配になるほどです。

これまで何度も経験した流産では、途中経過の診察で成長が小さめと言われることが多かったため、順調に成長してくれていることが本当にありがたく感じます。

 

お腹の子が健康に生まれてくれることだけを願って…。

赤ちゃんにたくさん話しかけたり一緒に音楽を聴いたりして、心穏やかに過ごそうと思います。

 

 

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胎児の染色体検査と夫婦の染色体検査の結果

 

 

流産の手術を行ったため、治療は一周期おやすみしていました。


手術から一ヶ月後の土曜日。

手術後に行った胎児の染色体検査と夫婦の染色体検査の結果を聞くために二人で受診しました。


胎児の検査結果も気になりましたが…

私たちは夫婦の検査結果を聞くことに、極度の緊張感を持っていました。


前回の記事にも書きましたが、先生からは、

「以前の流産で胎児の検査をした時に異常がなかったことや、毎回流産となる週数が比較的進んでいることから、夫婦の染色体検査は陰性の可能性が高い。」

と言われました。

しかし、それも可能性の話でしかありません。

もしどちらかに転座などの染色体異常があった場合は、今後の治療を続けるにあたり、大きな影響があります。


もし異常があった場合、

流産を繰り返す覚悟で治療を続けるか。

着床前診断を行なってもらえる病院に転院するか。

妊娠を諦めるか…。


そうなる覚悟をした上で、この日は結果を聞きに行ったのです。

 

 

診察室に呼ばれ、緊張しながら入ると、まず胎児の検査結果が報告されました。


『検査の結果は異常無し』

報告書を見ると、染色体はXYで男の子でした。


「今回は異常ありかと思ったんですけどね…」と先生。

流産になった時に胎児に浮腫みがあったため、そう思われたのかもしれません。

「この検査で異常無しだからといって、赤ちゃんが原因ではなかったと言いきることはできません。染色体とは関係のない、何かしらの病気だった可能性もあります。」

と付け加えられました。


もしそうだとしても、8回も流産をしている身としては、自分のせいではないとは到底思えません。

今回も心拍は確認できていたし、ある程度成長していたのだから、私の不育症が原因の可能性の方が高いはず。

心の中で赤ちゃんと夫に“ごめんね…”と呟きました。

 

そしてその後、別の用紙が差し出されました。

あまりにサラッと渡されて拍子抜け。 


「夫婦の検査の方は、やはり異常無しですね。」


私以上に緊張していた夫が、隣でふーっと息を吐くのがわかりました。

私もほっとして肩の力が抜けました。

いったい、さっきまでの緊張感はなんだったんだろう…。

 

 


不育症の治験を受けるためには、『夫婦の染色体検査で異常が無いこと』が条件に含まれます。

これまであえて避けてきた検査に踏み切ったのは、治験を受けてみたいと思ったから。

今回の結果を聞いて、私たちの計画はまた一歩前進しました。


*治験を知ったきっかけはこちらをご覧ください↓↓↓

 


治験薬を投与することについて、私はあまり抵抗がありませんでした。

もともと薬の副作用が出にくい体質ということもありますが…。

今回治験を行なっている薬は、別の病気に対して既に世の中で使われているので、未知の副作用が出る確率が低いだろうと思ったからです。

(もともと別の病気に使われている薬でも、新たに不育症の適応を加えるには、製薬会社が『不育症に効く』と証明するための治験を行う必要があるのです。)


しかし夫は、治験をすることで私の身体に悪影響を及ぼすのではないかと、とても心配していました。


そこで現れた救世主が、以前記事にも書いた職場の上司Aさん。


*Aさんについて↓↓↓

 

なんと、Aさんの旦那さんが治験コーディネーターだったのです!


Aさんに、治験を受けたいと考えているけれど夫が心配していると相談すると、旦那さんと一緒に会う機会を設けてくれました。


Aさんの旦那さんは不育症の治験を担当しているわけではなかったし、もちろん立場的に話せる内容は限られていたと思うのですが…。

話せる範囲で治験とはどういうものかを丁寧に説明してくれました。


話を聞けたことで夫も少し安心した様子。

 

ひと通り話し終わったあと、その方がかけてくれた言葉が印象的でした。

「特に不妊治療や不育症治療の分野は薬の効果が実証しにくく、精神的な面での影響がとても大きい。治験を受けたことによる安心感から、薬に当たらなくてもうまくいくという可能性も充分あると思う。」


休日に時間をとって快く相談に乗っていただき、Aさんご夫婦には本当に感謝しかありません。

 

 

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そして私たちは、次の移植を行うまでに、治験を行なっている都内の病院に話を聞きに行くことに決めたのです。

 

 

流産後の経過と夫婦の染色体検査

 

 

手術のあと、治療は一周期おやすみになりました。


心身ともに回復させると共に、この期間に治験について夫婦で色々と調べました。


その中で、治験を行う条件の1つに、『夫婦の染色体検査で陰性であること』が含まれるとわかりました。

これまで避けてきた夫婦の染色体検査。

万が一どちらかに異常があった時に、異常があった本人が自分を責めてしまいそうな気がしていたからです。

でも治験という新たなステップに臨むために避けては通れないと知り、覚悟を決めて受けることにしました。

 

 

手術後の経過確認のため、手術から2週間後に予約を入れていましたが、それまでの間に夫婦の染色体検査を受けに行きました。

 

検査自体は採血をして終了なのですが、その前に診察室で先生から説明を聞きました。

 

  • 検査で陽性となるのは、不育症患者の約2%。
  • 以前の流産で胎児の検査をした時に異常がなかったこと、毎回流産となる週数が比較的進んでいることから、検査の結果は陰性の可能性が高い。
  • 万が一どちらかが陽性だった場合、名前を伏せて結果だけ渡すこともできる。
  • もし陽性だった場合は、着床前診断を勧める。妊娠率が上がるわけではないが、着床前に卵の異常を確認できるため、流産の回数を減らすことができる。

 

説明を聞いたあと、今後不妊治療と並行して治験を受けようと考えていることを伝えました。

先生も「良い決断ですね」と賛成してくださいました。

 

治験を行なっている病院は全国でも数えられる程度。

住んでいる県には無く、ぎりぎり自宅から通えるのが都内の3病院のみ。

先生に聞いてみると、どの病院も古くから不育症を研究している有名な病院とのこと。

どの病院を選んでも信頼できそうとわかり、安心しました。


こちらの医院の患者さんで、これまでに治験を行った方がいるか聞いたところ、なんと私たちが初めてとのこと。

希望した人は一人いたけれど、条件に合わず受けれなかったそうです。

例の少なさに驚くと同時に、“治験を紹介しなければいけないほど流産する人も珍しいんだろうな…”と感じました。


お世話になっているこちらの医院に新たなでデータを提供したい!という目標も加わり、治験に対する意欲がより一層高まりました。

 

 


流産の手術から2週間にわたり、だらだらと出血が続きました。

出血が終わった頃にちょうど経過確認の予約日となり受診しました。


エコーの結果、特に問題無いとのこと。


前回は流産後に卵巣が腫れてしまいましたが、今回は順調に回復したようです。


もともと身体は丈夫な方。

風邪を引くことは少なく、引いても一日寝れば回復します。

治療や流産で身体に負担がかかった時も、幸い比較的早く回復してくれます。

治療を始めてからも、できる限りバスケットに参加していたことが、功を奏したような気がします。

これからも流産に負けない身体を保つために、バスケを続けたいと思いました。

 

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胎児の染色体検査と、夫婦の染色体検査の結果は次回へ。

 

 

3回目の流産手術

 


流産の手術の前日、心拍の再確認と、子宮口を開く処置をするために受診しました。


前回の受診から2日しか経っていませんでしたが、この時すでに出血が始まっていました。


以前手術をした際、子宮口を開く処置が痛すぎて中断したため、今回も無理にはしないとのことでしたが、いざ内診台に上がると緊張しました。

内診してもらったところ、出血量が多く、すでに子宮口が広がってきているとのこと。

処置は必要ないでしょうと言われ、ほっとしました。


念のため行ったエコーでは、2日前と同じく心拍は見えず、胎児の大きさも変わっていませんでした。


流産を宣告されるまで血流を良くするバイアスピリンとヘパリン注射を使っていたので、手術に影響しないか気になり、先生に聞いてみました。

本当はもう少し早めに中止するのが理想だけれど、慎重に行うので大丈夫と言われ、安心しました。

 

 

夫婦で話し合った結果、今回の手術では胎児の染色体検査を行なってもらうことにしました。

前クリニックで一度検査した際は異常無しでしたが、その後の流産では行っておらず、再度調べてみたいと思ったのです。

それに、治験を受ける上でも、胎児の染色体検査の結果が必要になりそうだったからです。

 

 


手術当日。

出血量が増え、生理痛のような痛みが出てきていました。

安静室でガウンに着替えて準備。

出血のことを看護師さんに伝えると、下着を着けたまま待つように、とのこと。

しばらく待機したあと手術室へ。

今回も顔見知りの看護師さんが担当で、心強く感じました。

手術台に寝かされ、血圧計、心電図、パルスオキシメーター(血中酸素濃度&脈の測定器)をつけられ、足を固定。

 

先生を待つ間、ふと看護師さんに「手術の回数が多いと妊娠しづらくなりますかね~?」と聞いてみました。

すると、ちょうど入室されたサバサバした女医さんが、代わりに答えてくれました。

「それはないですよ。手術で妊娠しづらくなるぐらいなら、出産回数が多い人はもっとしづらいはず。手術に比べて出産はもっと子宮が傷つくからです。それに、子宮はけっこう回復しやすくできてるんですよ!」

それを聞いて、少し心が軽くなりました。


院長先生が入室されるとすぐ麻酔が投与され、悲しむ間も無く意識が遠のきました。

 

 

回復室に運ばれて少しした頃、ふと目が覚めました。

“痛いっっ”

下腹部に強い痛みを感じました。

以前の手術では痛くならなかったのに。

我慢できずにナースコールを押し、看護さんに痛み止めの座薬を入れてもらいました。


きっと陣痛は、比べものにならないぐらい痛いに違いありません。

でも赤ちゃんに逢うために耐える痛みと、お腹にいた赤ちゃんを失った時の痛みは、きっと感じ方が違うでしょう。

死産された方は、辛い上にもっと強い痛みがあるのだと思うと、心が苦しくなりました。

 


点滴が終わる頃に起こされ、待合室へ。

 

そしてすぐに内診室に呼ばれました

院長は帰られたようで、内診と診察は先ほど手術室にいた女医さんでした。

内診では止血用のガーゼを抜き、出血確認とエコー。

ガーゼを抜くのは相変わらず痛かったですが、何度も採卵や手術をしているうちに、だんだん慣れてきました。

出血量は少なく、エコーの結果も問題ないとのこと。

抗生剤と痛み止め、子宮収縮剤を処方され、終了となりました。

 

 

手術後の経過を診てもらうため、2週間後に再診の予約を取りました。

次に来た時には治験について先生としっかりお話できるよう、再度詳しく調べておこうと思いました。

 

 

 

以前手術を行った際は、双子の妊娠だったことや、途中経過が良かったことなどからショックが大きく、手術前に泣いてしまいました。

その時に比べて今回は、冷静に手術を受けることができました。

移植後の成長過程で危うかったこともあり、こうなる運命だったのかもしれないと自分の中で納得できている部分もあったからだと思います。

 

“これまで天国へ行ってしまった赤ちゃんたちのためにも、今できることに正面から向き合おう。”


自分たちがするべき事は何か、もう一度夫と話し合おうと思いました。

 

 

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